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みんなの水ものがたり作品募集
ジェーン博士からの手紙
ジェーン博士より「水について」の手紙が2007年10月、事務局に届きました。
手紙には「多くの人々に伝えて下さい」というメッセージがそえられていました。
そこで事務局では博士の水についての考えを広くつたえようと方法を考えていたところ、「みずものがたり」水をめぐる 7の話 ダイヤモンド社(ビジュアル・エコブック2)の一部に所収されることになりました。
さあ、ジェーン博士の水についての手紙、どうぞご覧ください。
水は、美しく、はかり知れない力を秘めた生命のみなもとです。私がチンパンジーの研究を始めたタンザニアのゴンベ国立公園は、世界で2番目に深く、南北の長さ670キロにもわたるタンガニーカ湖に接しています。この湖では、風に持ち上げられた水が高さ10メートルもの大波となって岸に砕けることもあれば、嵐の夜には湖面が稲妻に切り裂かれることもあります。ときには、渦を巻いてわきたつ波が、ふしぎな自然の法則にみちびかれて湖面に広がってゆくことも……。
1960年に私がこの湖を訪れたころは、乾季になると透明な水が空と森を映していたものでした。湖岸に広がる森は、湖から遠く離れたところまでうっそうと緑におおわれていました。けれども、湖畔の小さな村々で人がしだいに増え、木々がどんどん伐り倒されていきました。大地をうるおす森が消えれば土は乾き、作物は枯れます。人々は収穫を増やそうと様々な方法を試みましたが、もろい表土が流され、かえって土地はやせていきました。
その土は川へと流れこみ、川底は浅くなりました。くわえて、川面に影を落とす木々がなくなったためにつよい日差しが照りつけ、水が蒸発して、水かさが減っていきました。こうして、輝く澄んだ水をたたえていた川は、細く淀んだ川へと姿を変えてしまったのです。森が豊かだったころには、木々が雨水を吸い上げてくれましたが、今ではそうした自然の貯水槽がありません。豪雨におそわれれば、川にはいっきに水が流れこんで、家々を押し流し、人々の命まで飲みこんでいくのです。嵐の後の湖には、2キロ近くにもわたって、洪水で流れこんだ赤い土が痛々しい傷跡のように残っています。
湖底には、山肌から削りとられてきた土砂が層をなして積み重なり、魚の産卵する場所がなくなってしまいました。魚がとれなくなって困っていた地元の漁師たちに、ヨーロッパから来た人々が新しい漁法を教えたのですが、少ない魚を捕り過ぎてしまうことになって、湖の自然はいっそう傷つくばかりでした。 私の目の前で、風景がすっかり変わっていきました。ここだけではありません。私たちは世界中で、数え切れぬほどの破壊を繰り返してきました。世界の人口が増えつづけるにつれて、人が使う水の量もどんどん増えています。家畜を育てるために、そして家畜の餌となる作物を育てるためにも、おびただしい水が使われます。こんな風に水を使う生活をずっと続けることはできません。
生きものたちの命を支える水。その大切な水をたたえた湖や川に、工場や畑、家庭の排水口、ゴルフ場などから、汚れた水が流れこみます。汚れてしまえば水は飲めません。世界で11億あまりの人々が、安全な飲み水が手に入らない地域で暮らしています。しかも、そのうちの何百万という人々は薪が手に入らず、汚れた水を沸かして飲むこともできないのです。そのため、幼い子供たちが次々に病気になっています。 それでも、ゴンベに帰ると私の心には希望の火がともります。ゴンベの森の奥深くには、すばらしい滝があります。突き出した岩から25メートルほど下まで水が勢いよく落ちています。ほとばしる滝のまわりには、いつも涼しい風が吹きわたっています。ここは私にとって、ゴンベの森でもとりわけ心安らぐ場所なのです。チンパンジーたちもときどきここに来て、岩をうがつ激しい滝の音に耳を澄ましています。
やがて、体のなかに力が湧きあがるように彼らの毛が総毛だち、体をリズミカルに動かして、荘厳な「滝のダンス」をはじめます。ときには、滝のそばにあるつるにぶら下がってぶらんこのように揺れ、輝く水しぶきを浴びて、生命のよろこびを弾けさせるのです。
水というかけがえのない生命のみなもと。これから生まれてくるものたちのために、水の恵みに感謝し、水をかしこく使う暮らしを学ばなくてはなりません。すでに、水の大切さを知り、水を守るために行動を起こしている人たちはいます。私はそこにたしかな希望を見いだしています。
ジェーン・グドール (訳 伊藤和子)
ジェーン博士のみずについての手紙は 「みずものがたり」水をめぐる 7の話 ダイヤモンド社 (ビジュアル・エコブック2)の一部に所収されています。
みずものがたりは水に焦点を当て製作されたエコブックで、シリーズ第一弾「いきものがたり」につぐ第二弾となります。イラストや写真などを駆使しわかりやすくまとめるだけでなく、著者ごと、章だてごとに、関連書やアクティブな活動を例示しています。 また、企業などの支援により、全国の小中高校へ配布されています。
「みずものがたり」ではジェーン博士以外にも多くの方が寄稿しています。ぜひ一度お手にとってご覧ください。また、同本では 「みんなの水ものがたり」作品を募集しています。
水について自分たちが考えたイラストや作文を2008年4月1日から9月30日まで募集しています。
Roots&Shootsの一貫として、自分たちのまわりの水についてかんがえてみませんか?
そして考え作成した文章やイラストをだしてみませんか?
応募については直接事務局までおたずねください。